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最高裁判所第一小法廷 昭和30年(き)3号 決定 1955年6月30日

申立人

中田公弘

右の者から昭和二六年四月一八日当裁判所大法廷のした上告棄却の判決に対し、再審の請求があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件請求を棄却する。

理由

上告棄却の確定判決に対する再審の請求は、刑訴四三六条一項に定める事由の場合だけに許される。しかるに申立人は第一審判決が証拠とした鑑定が虚偽であることの確定判決を得ることができないので、その事実を証明して本件再審の請求に及んだというのである。しかし、再審の請求は本来事実認定の誤の救済であるから、原則として事実の認定をした裁判所になさるべきものである。従つて、上告棄却の判決に対して例外的に再審の請求が許されるのは右刑訴四三六条により上告審の関与裁判官に職務上の犯罪があつたときの外はその上告棄却の判決を言い渡すについて特に証拠とした資料即ち自ら事実の取調を行つて集取した証拠又は上告棄却判決が判断の資料として特に掲げた証拠について同四三五条一、二号の事由が存在しなければならないと解すべきである。しかるに、所論の鑑定書は原上告棄却の判決が右の何れの意味でも判断の資料としたものではないこと記録上明らかであるから、本件請求は右四三六条一項、四三五条一、二号、四三七条の場合に該らない。されば、所論の事由に基く再審請求は、所論鑑定書を証拠とした事実の認定をした裁判所に請求をするのは格別、本件請求を当裁判所にすることは許されないものといわなければならない。

よつて同四四七条一項により、裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 真野毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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